L.A. (終章)
ロサンゼルスに来て、10日以上経っていた。
最初は5日ほど、ノブ君の家に泊めてもらったが、その後ヴェニス・ビーチにあるユースホステルに移った。そして、そこで知り合った、オーストラリア人旅行者で片言の日本語が出来るロッド・ホイと、毎日ビーチをブラブラとしていた。
ずっとユーラシアを旅して来た僕がアメリカへやって来ることは、抵抗があった。それは、旅の最中(特にイスラム圏)、至るところで、アメリカの悪業を聞かされていたからだ。
日本にいると、アメリカ寄りの情報しか流されないために、洗脳されてしまいそうだが、アフガニスタンで、イラクで、パレスチナで、コソボで、世界中のいたるところで、アメリカがやっていることは何なのか。
一方的なキリスト教原理主義者による押し付け(侵略)。
「日本は・・」「日本人は・・」と一括りにされるのは嫌なように、もちろん、色々な考えのアメリカ人がいると思う。
しかし、そのアメリカ白人の醜く太った体が、世界中に与えている抑圧的で傲慢な態度を、象徴しているように見えて仕方ない。コーラとかフライドポテトとかばっかり飲んで食って、手足は細いのに、腹の辺りだけ異常に醜く太ったアメリカ人を見ると、本当に嫌な気分になるのだ。
リトル東京には、紀伊国屋書店、旭屋書店と、日本の本屋がある。
半年振りに見る書店は、知らない本だらけだった。毎日のように、書店で立ち読みし、その後、買った本を、ヴェニス・ビーチに寝転んで読み耽った。
そんな僕を見て、ロッドは笑っていた。
「お前は何がしたいんだ?」 ロッドが言う。
「オレは旅を・・・・・」
「ずっと旅するつもりか? 旅を終えた後、何をするんだ?」
「・・・・・・・・・・。 ロッドは、どうするんだ?」
「オレは一生旅を続けるよ(笑) でも、お前は、やりたいことが他にあるんじゃないか?」
ヴェニス・ビーチからサンタモニカの方へ、当てもなく歩き続け、ヨーロッパに戻る復路の航空チケットをゴミ箱に捨てた。
砂浜に仰向けになって、寝転ぶと、そこには、カリフォルニアの青い空が、どこまでも広がっている。
ふと、足元を見ると、自分の影が、今にも消え入りそうに、砂浜に映っていた。
(完)