イスファハン~テヘラン(イラン編3)


大きな地図で見る

f:id:matatabido:20070521023044j:image f:id:matatabido:20070521023108j:image

(なぜ、アリ・ダエイマンチェスター・ユナイテッドの、アジジがセルティックのユニホームを?? アイコラ以下の顔の挿げ替え。イランでは、こんなブロマイドが売られている。笑)



 イスファハン(▼注16)にやって来た僕は、毎日のようにイマーム・ホメイニ広場でボーっとしていた。

 そんなある日、突然、日本語で話しかけてくるイラン人がいた。イスファハンに滞在した旅行者の間では有名な人らしく、「ノマド」という絨毯屋をやっているアリさんと言う。

 このアリさん、日本人旅行者を見ると話しかけ、自分の店に招き、旅行者の世話役のようになっているらしいが、なぜか絨毯を一切勧めようとはしない不思議な人である。どうせ貧乏な旅行者が絨毯を買うわけがないと思っているのか。 最初は絨毯を押し売りされるのではと、胡散臭く思ったが、ただの日本好きの親切な人なのかもしれない。


 アリさんはサッカーが大好きであった。

 日本とイランは、昨年のサッカー・フランス・ワールドカップアジア最終予選3位決定戦で対戦し、ご存知のように日本が岡野の劇的なVゴールで勝利し、ワールドカップ初出場を決めた。

 最終的にイランも、オーストラリアとのプレーオフで何とか勝利し、日本とともにワールドカップ出場を果たしたため、今となっては笑って話せるが、あのままイランが出場を逃していたら、ワールドカップの話は禁句であっただろう。

 「日本は、プレーオフでオーストラリアに勝てないだろうから、わざと負けてあげたんだよ。」アリさんは、そう言う。まだ根に持っているのか。おそらく半分は本気なのであろう。


 数日後、イスファハンから、さらにバスで6時間、首都テヘランへやって来た僕は、昼間、今にも迷子になってしまいそうな程に広いバザールなどをずっと散策し、夕方になると、ハマム(▼注17)に行くといった毎日を送っていた。

 

 泊まっていた安宿マシャド・ホテルでは、適当に日本人旅行者が集まると、日本料理店「瀬里奈」にキャビア寿司を食べに行くというのが定例になっている。

 ある夜、日本人4人で、街の北の方にある瀬里奈へ向かった。瀬里奈は、テヘランで最も高級なレストランらしく、おそらく日本人ビジネスマン用に作られたに日本料理店なのだろう。

 その高級料理店に、汚らしい格好をした日本人バックパッカーが押し寄せて来るのだがから、店としては全く迷惑な話である。かなり食べても、ひとり5000リアル(≒1500円)程度。決して安くはないが、いくら長期旅行者でも、日本人にとって払えない程高い額ではない。

 サンダル履きに薄汚れたTシャツ姿でやって来た訳だが、そんな僕たちに嫌な顔ひとつせず、中へ入れてくれた。慣れているのだろうか。すかさずキャビア寿司と誰もが美味しいと言うスキヤキを注文した。


 周りを見回すと、隣できれいな女性を連れた、おそらく金持ちであろうイラン人が、得意気な顔をしているのが見えた。ところがよく見ると、そのイラン人、スキヤキの食べ方が分からないらしく、鍋の中に山盛りの野菜、そして一番上の汁に浸かっていないところに、肉をすべて乗せ、ひたすら待っているのだ。

 教えてあげたくなったが、彼女の前で一生懸命に頑張っている、そのイラン人を見て、思わず言いそびれてしまった。彼は、その後スキヤキを食べることが出来たのだろうか。

 

 久々の日本食に満足した僕たちは、その後、すっかりいい気分で、チャイハネイスラム式喫茶店)で、水パイプを試し、暗くなったイマーム・ホメイニ広場を散歩していた。すると、サッカーボールを抱えた地元の学生たちが、こう、話し掛けて来た。

 「一緒にサッカーやらないか。イランVS日本の再戦!」

 まだ根に持ってるのか・・・



▼注16「イスファハン」 参考文献「旅行人ノート・アジア横断」

 イスファハンは、イランで最も美しい都市と言われ、日本で言えば京都のようなところ。

 歴史は古く、長い間、シルクロードの交通の要所と栄えていたが、1220年にモンゴルの襲来を受けて、一時廃墟と化す。しかしその後、復興し、サファヴィー朝最盛期の王シャー・アッバースが首都と定めてから、その繁栄の頂点を向かえ、美しい建物が数多く作られ、「イスファハンは世界の半分(の美しさ)」讃えられた。

 イマーム・ホメイニ広場は、ユネスコ世界遺産にも指定されており、イラン観光のハイライトである。


▼注17「ハマム」

 ハマムとは、イスラム式の公共の風呂であるが、日本の銭湯のような共同の湯船がある訳ではなく、中のスペース全体がサウナのような蒸し風呂になっており、そこでかいた汗を流すために、個別に仕切られたシャワーが並んでいる。

 当然のようにここはイスラム圏であり、人前では全裸にはならない。外国人であるため珍しいのか、僕は周りのイラン人からジロジロと見られていたようだが、逆に僕の方こそ、イラン人たちの背中まで毛が生えているような物凄い毛深さが気になって、ジロジロ見てしまった。