バルセロナ(スペイン編2)


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 ついに、この旅も、年をまたぐまでになっていた。

 ピレネー山脈アンドラから下りて来て、スペインへ入国。メイ君とともバルセロナに滞在していた。

 昼頃に起き、アントニオ・ガウディの、かの有名なサグラダ・ファミリアグエル公園などの観光名所から、ランブラス通りなどを別行動で回った後、夜に、それぞれスーパーで買って来たパンや缶詰を食べながら、ワインを飲む。相変わらず、南仏と同じような生活を続けていた。

 必ず、僕が先に部屋に帰って、ワインを飲み始めた後、メイ君が帰ってくる。そして、帰って来て、玄関のベルを鳴らすと、一日中、入口のところに座っている宿の太ったオヤジが出迎えてくれる。

 「アミ~ゴ~!!」

 港近くのランブラス通りから、少し路地に入った旧市街の裏通りにある、名もない安宿。僕たちの泊まっているその宿は、掃除も行き届いていなく、最初は居心地が悪いかと思われたが、1週間以上も滞在していると、昔からここに住んでいたかのように、部屋やオヤジに馴染んできた。


 ある日、いつものように、午後8時頃に宿に戻って来た僕たちは、部屋で軽く飲んだ後、午後11時頃、再び出掛けようとしていた。今日は12月31日。バルセロナ港で、新年のカウントダウンがあるのだ。

 まだ年明けまで、1時間以上あるにも関わらず、既にランブラス通り周辺では大騒ぎ、みんな路上でワインを飲み、店はどこも満員であった。スリに気を付けながら、人ゴミを掻き分け、バルセロナ港へ向かった。

 バルセロナ港では、既に多くの人でごった返し、みんな自分たちで持ち寄ったワインを手にし、年が明けるのを待ち構えていた。ランブラス通りが、比較的若い連中が多いのに対して、港では、家族連れが多いようだ。


 そして、あと10秒と迫った時、ついにカウントダウンが始まった。

 「10、9、8、7・・・・・・・」

 ところが、港に時計がある訳ではないので、みんな自分の腕時計でカウントダウンしているため、時間がかなりズレているのだ。カウントダウンし終わって、「ハッピー・ニューイヤー!」とクラッカーを鳴らして、騒いでいる横で、まだ、「10、9、8、7・・・・・・・」とカウントダウンしている人たちがいたり、とにかく一体感に欠けているのだ。

 港に集まっている人たちは、家族連れが多いせいか、どちらかと言うと大人しい雰囲気であり、もっと雑然とした盛り上がりを期待していた僕たちは、早々と港を離れ、再びランブラス通りへ向かった。


 ランブラス通りへ行くと、そこら中に割れたワインのビンが散乱し、至るところからマリファナの匂いが。中には、この凍える寒さの中、ビールを掛け合ったりしているやつもいる。

 割れたワインのビンが、そこら中に散乱しているのは、若い連中が、ワインをラッパ飲みした後に、空きビンを街燈に目掛けて、投げ付けているからなのだ。そのせいで、街燈は、無残にも、ぶっ壊れていた。

 僕たちもビールを飲みながら、カタルーニャ広場まで足を伸ばしてみた。


 すると、広場では何と、地元の不良グループたちが、大乱闘をしているではないか。手には、鉄パイプ、チェーン、割れたワインのビンの破片を手に持っている。唖然として、その場に固まってしまった。

 下手に動くと目立つので、メイ君と離れて、不良グループ以外に誰もいない(おそらく、みんな逃げてしまったのだと思う。)公園の端の方で、黙って様子を伺っていると、何と突然、鉄パイプで一方的に殴れていた、劣勢になっていたグループのうちのひとりが、僕の方へ向かって、逃げてくるではないか。

 「おい、こっちへ来るんじゃない!」

 思わず、心の中で叫んだが、その逃げて来た少年は、横を通り抜けて行く。さらに、鉄パイプを持った、もう一方のグループの少年が、追いかけてくる。少年と言っても、体がでかいのだ。

 もの凄い形相で、鉄パイプを持って、追いかけて来る、その少年と目が合う。その時、体に緊張が走った。

 「やばい!」

 しかし、少年は、横を通り抜けて行ったのだった。


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