マドリッド(スペイン編6)


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 スペイン、特にアンダルシア地方では、列車よりもバスの方が細かく路線が延びており、安くて便利である。そのため、スペインでは、移動に、ほとんどバスを利用していた。


 話が前後するが、セビリアからマドリッドへ向かう時も、当然のようにバスを使って、移動していた。アジアのバスと比較すると、考えられない程、快適。

 アジアでは、常に心配の種であったトイレも付いており、これで悩みもすべて解消されたと安心して、ミネラルウォーターやジュースを飲みまくっているにも関わらず、全くトイレに行きたくならない。

 ところが、手を洗おうとトイレに行くと、何とドアのカギが壊れていて、開かないではないか。

 すると、急にトイレに行きたいような気がしてくる。今まで全くトイレに行きたくなかったのに、トイレに行けないことが分かると、不思議と急に行きたくなるなんて、人間の心理(僕の心理だけ?)は困ったものである。

 あんなに飲み物を飲まなければよかった。そう後悔しながら、回りを見まわしてみると、やはりスペイン人たちも、僕と同じように、いや、それ以上に、水やジュースを飲んでいる。中には、ビールをガブ飲みしているオジさんまでいる。

 にも関わらず、トイレに行きたいのは、僕だけのようだ。トイレ休憩も少なく、みんなどこかでトイレに行っているはずはない。そもそもヨーロッパには、公衆トイレも少なく、彼らは一体いつトイレに行くのだろうか。日本人とは、体の仕組みが違うのだろうか。


 結局アジアの時と同じく、トイレの心配から解放されることなく、セビリアからマドリッドへやって来た。

 「下品な毛沢東」と別れた僕とメイ君は、マドリッドの目抜き通りであるグランビア通りから、少し路地へ入った、一般的には少し治安の悪いとされる地域に宿を取り、バルセロナの時のように部屋をシェアすることになった。


 その日は珍しく、朝から連れ立って、宿を出た。週に一度、日曜日に開かれる蚤の市へ行くためであった。毎日、ワインばかり飲んでいる、退屈なマドリッドでの日々を活気付けるかのように、蚤の市は賑わっている。久々に夢中になった。

 骨董品、よく分からないガラクタ、ジャンク品から、中古レコード(フラメンコが充実)、古本まで、ありとあらゆるものが売られており、古本の中には、日本のコミック、「ドラゴンボール」「エヴァンゲリオン」などのスペイン語版(海賊版?)まである。


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 夜、珍しく、先に宿へ戻っていたメイ君に続いて、僕も宿へ戻って来た。

 僕は、蚤の市の後、ひとりでサンチャゴ・ベルナベウへ行き、レアル・マドリッドVSアトレチコ・マドリッドのゲームを観ていた。

 ゲームは、バルセロナの時と大違いの盛り上がりで、熱狂的(狂暴?)で知られるレアル・サポーターは、スタンドで大暴れ。イスは燃やすし、警官と乱闘するし、正にやりたい放題。メイ君と、そのゲームのことや午前中の蚤の市のことを話しながら、何杯も何倍もワインを飲み続けた。


 一体どのくらい飲んだのか。いつの間にか眠ってしまった僕は、夜中、突然の気持ち悪さで目を覚ました。バスの中と違い、ここは宿である。安心して、トイレへ直行すればいい。トイレのカギは壊れていないだろう。

 そんなことを考える余裕もない程の勢いで、便器に吐き続けた。吐くのは、この旅で、中国の長距離列車で白酒を飲み過ぎた時、パキスタンフンザ寄生虫にやられて寝込んだ時、スロベニアブレッド湖で飲み過ぎた時に続いて、4度目か。いやそんなことは、どうでもいい。

 あまりの勢いで、吐き続けたため、突然、ゲロが喉に詰まり、窒息しそうになった。

 やはり、トイレで・・・・

 しかし、こんなところで死んでるわけにはいかない。明日は、ついにポルトガルへ向かうのだ。